『わたしを離さないで』 カズオ・イシグロ

ノーベル文学賞を受賞したカズオ・イシグロの小説で、臓器提供のためだけに生まれてきた子ども達の話。
臓器提供のために生まれてきたことを先生が本人達に語るシーンが怖かった。
 あなた方は誰もアメリカには行きません。
映画スターにもなりません。
あなた方の人生はもう決まっています。
これから大人になっていきますが、あなた方に老年はありません。
いえ、中年もあるかどうか…。
いずれ臓器提供が始まります。
あなた方はそのために作られた存在で、提供が使命です。
それだけでも充分ホラーなのに、当の子供たちは、自分たちの運命を薄々感じていながら、逆らうでもなく、逃げるでもなく、受け入れて、死んでいく。
この感覚の方がよほどホラーだった。
提供まで3年間の猶予が欲しいと教師の元をたずねる生徒たちに、教師は言い放つ。
「あなたを助けることはできない」と。
「あなたの人生は、決められたとおりに終わることになります」
理想論を言えば、クローン人間をたくさん作ったら、臓器移植で助かる命は全て助かるのだろう。自分のクローンならば拒否反応もない。
究極の「人の役に立つ」人生なのかもしれない。
とはいえ、私は臓器提供意思カード(ドナーカード)にサインはしないなあ。
人の役に立つとはいえ。
何度も全身麻酔手術をした経験からは、深い眠りに入っている間は、何をされても全く記憶にさえ残らないので、もしかしたら、生きているうちに臓器を取り出されても、痛みも記憶も何もないのかもしれないが、それが確実なのか、いまいち自信が持てないので。


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