テレビである女性アナウンサーがお勧めしていたので読んでみた。
短編集から成る。
ネタばれにならないように、ザっとだけ。
『再生』
妻が鬱で自殺。残された夫と子どもは何年も悲しみを引きずっているが、そこに妻の友人だった女性が現れ、不思議なことを言い出す。
『ガラスの目』
息子が障がい児だということを到底受け入れられずに、妻子を捨ててしまった男。
罪の意識に苦しみながら仕事をしているが、とうとう決心する。
車を暴走させ死ににいこうとすると、驚いた小鹿の目と合う。無表情な息子の目と同じだった。
『流れる』
付き合いが長く、いずれは結婚すると思っていた男から突然フラれた女。現実を冷静に受け止めつつも最後に仕返しを。
『東京地理試験』
定年退職した夫が再就職先としてタクシードライバーを目指すが、地理試験の不合格を更新し続ける。そんな夫を見守る妻。
『ミツバチの羽音』
派遣社員で働く女たち。自分の生活だけで精いっぱいで横のつながりのない派遣社員たち。
その中に障がい児の息子を抱えた主婦がいて、仕事を急に休むなど周りに迷惑をかけながらも周囲に気を遣いながら必死で仕事をしている。
仕事も無味乾燥、他人に興味もない派遣社員たちだったが、その主婦を仕方ない気持ちで手助けした後の清々しいまでの充実感があった。
『ツルバラの門』
ADHDの障害を持つ息子が保育園でトラブルを起こさないように、事前に母親が息子の紹介をプリントして保護者たちに配るが、保護者の一人に「息子が障がい児だからって特別扱いしてほしいのか?」と攻撃をくらう。
『仕事始め』
まだ20代半ばだというのに、体調不良が襲う。病院で診てもらうと、心療内科を勧められる。仕事のストレスだった。
ストレスとは、もともとは「生命の危機があるのに、その場から逃げられない動物が感じる苦痛」なのだそうだ。鎖に繋がれた犬のもとに、ライオンがやってくるが。絶対に逃げられないという恐怖と苦痛、それがストレスなのだ。
『海に立つ人』
独身でいて特に困りもせずに生きてきた男。沖縄旅行でビーチに1人でいる女性と出会う。
気になりながらも声もかけられない。また会えるのを期待して夜のビーチに出向くと、女性は白骨を海に撒いていた・・・。
『銀のデート』
50代でアルツハイマーになった夫に付き添う妻。
ある日、夫がいそいそとデートに出かけるという。
不信に思いながらも、デートに出かけるため、ネクタイを締めてあげたりして準備を手伝う。
そして跡をつけると・・・
『火を熾す』
定年退職した男が、公園で薪をして焼き芋を焼いていると、不登校の小学生と、会社に行けなくなった若者が集まってきて、火を囲み、芋を食べながら自分の境遇を話し出す。火の持つ不思議さ。若者は会社に行く決心をし、それが一週間続いたら、不登校の子にも学校に行くんだよと約束をする。
『出発』
親の期待を裏切るようにして大学へ行かず夢を追い都会へ行った息子が、ある日倒れるようにして実家にたどり着く。父親は息子に「こいつは負け犬だ」と言い放つ。だが父親もリストラの危機だったのだ。お互いどん底にいながらも、腹を割って話をしていくうちに・・・
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