『ほどなく、お別れです』長月天音

就職活動に失敗し続けてたどり着いたのが葬儀屋さんだった。

主人公(女性)が死んだ人の声が聞こえるという特異体質なのだが、それは彼女が生れる前日に事故で亡くなった姉が守護霊として憑いていることによる。

その能力により、自分が死んだことに気づかない霊に話しかけ、いつまでもここにいてはいけない旅立たなければいけないことを説得したりする。

ある日、幼い子どもの葬儀があった。母親は棺にすがりついて離れようとしないほどの悲しみよう。その子どもは自分が死んだことに気が付かずに、母親にまとわりついて話かけるが、生きてる者は全く気が付かない。

それが視える主人公と僧侶は、そのとおりのことを悲しんでいる母親に話してあげればいいのにと私は思った。

小説では話すことはなく、どうやって子どもに、ここから立ち去らなければならないことを納得させるか、母親の悲しみをどうやって乗り越えさせるか、という点に向けられていた。

それも大事だと思うけど、視えているのだから、「今元気に走り回ってます」(生きている時は病気で走ることができなかったので)とその様子を話してあげれば、母親も嬉しいだろうにと思ってしまった。

同じように、死んだ人が自分の葬儀に現れてしまうのを視てしまうのだが、やはり「ここに来ていますよ」という話は悲しむ家族にはしない。私だったらしてほしいんだけどなあ。

いろいろ自分に重ねて思いつつも、登場人物も魅力的で、よい読書ができた。


ほどなく、お別れです

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