『 プリズンホテル 1 夏』浅田次郎

ヤクザの経営する、悪趣味な調度品でゴテゴテに飾られた温泉ホテルで繰り広げられる、何でもありな物話。
来る者拒まずのヤクザのオーナーの元には、ヤクザ以外の一般のお客様もお見えになるが、そろいもそろってワケアリのお客様なのだ。

幼い頃に母に捨てられた小説家、ボヤ騒ぎを起こして左遷させられた支配人、濡れ衣を着せられて左遷された一流シェフ、心中志願の家族連れ、夫に離婚届けを出そうとする定年退職後の夫婦、タガログ語を話す忠実かつ面白い従業員。

「・・・・・なにしろこのホテルはマイナー中のマイナーでござんすから、なんでもありなんで」

ヤクザあり、地縛霊あり、心中未遂あり、離婚危機あり、殺人あり。
いわく付きの普通でない人達が、一つのホテルに集い、それぞれの人生模様が繰り広げられている。

このホテルに新赴任した支配人は、危うく指を詰められそうになるが、このヤクザホテルは「一泊二食ソフト付き」
ソフトとはソフトクリームではなく、翌朝ヤクザとお客様がプレーするソフトボール大会のこと。
「バカヤロー。てめえ何年極道やってやがる。」と怒号を響かせながら和気あいあいとソフトボール大会に興じている可愛い一面があったりして笑える。

ここに2泊しただけで、それぞれの家族は、それぞれ違った道を歩み始めていく。
落ちるところまで落ちたら、あとは上がるしかないのだろう。
希望が見える終わり方で、笑いもありの清々しい読後感だった。

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