『君たちはどう生きるか』 吉野源三郎

80年前に出版された本だというのに、隠れた名書としてずっと読み続けられている。
去年の夏に、漫画化され、それがベストセラーになっているので手に取ってみた。
漫画の方は小学生の姪と甥にプレゼントしたが、自分はまだ読んでいない。
中学生のコペル君と、叔父さんとのやり取りの中から物語は進められていく。
コペル君とは、天動説を唱えたコペルニクスから取った愛称。
叔父さんと、デパートの屋上から、無数の人間や車を眺めていた。
高いところから人間を観察しているうちに、この無数のうごめいている生き物一つ一つに、それぞれ生活があり、家族や友人がいると想いをめぐらしていると、突然不思議な感覚に。「人間って分子みたいだ」
人間はみんな広いこの世の中の一分子で、その波に動かされて生きているんだ。小さい個の自分が無くなって、大きな意識になって俯瞰してみることができた不思議体験。
同じクラスの、貧乏な浦川君は、その身なりや態度からして、いじめの対象となってしまい、それがエスカレートしたある日、コペル君の友達がかばって、いじめっ子と喧嘩になる。自分のことをかばってくれたことが嬉しくて、浦川君は、今まで見せたことのないような笑顔を見せる。
叔父さんとの対話は、ニュートンやナポレオンの話へと移っていく。
ある日、コペル君は、友達を裏切ってしまう。勇気が出なかったからだ。そのことで、生まれて初めて、はらわたをえぐられるような、死ぬほどの悔恨に見舞われる。
苦しんだ挙句、叔父さんにそのことを告白する。
たぶん、叔父さんから聞きつけたのだろう、心配した母親が、自分の昔話をし始める。
自分も、勇気を出せなくて、できなかったことを後悔していることがある。でも、その経験があったからこそ、人生が豊かになったという話をコペル君にする。
苦境を脱したコペル君。
叔父さんとの哲学的なやりとりは続けられる。
貧乏な友達もいれば、お金持ちの友達もいるが、それぞれに良い友達を持っている幸福感に包まれる。
漫画の方も読んでみよう。

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